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第49話 王妃を黙らせる夜

last update publish date: 2026-09-25 13:56:31

夜の王妃宮は、昼よりも白かった。

 月明かりのせいだろうか。

 それとも、王妃宮そのものが、夜になるほど人の気配を拒むようにできているのか。

 白い壁。

 白い柱。

 白い扉。

 銀の窓枠。

 庭に並ぶ常緑樹の影だけが、黒く沈んでいる。

 リディアは馬車を降りた瞬間、肺の奥が冷えるのを感じた。

 王妃宮へ向かう間、ギルベルトはほとんど口を開かなかった。

 リディアも同じだった。

 屋敷の書庫に残してきた婚姻契約草案のことが、頭の隅に引っかかっている。

 いや、正確には、その書類ではない。

 ギルベルトの言葉だ。

『怒る君も、泣けない君も、一粒だけ泣いた君も、食事を忘れる君も、役に立たなければ意味がないと震える君も、子どもの字を見て笑う君も、妹君に困っている君も。全部含めて、隣にいてほしい』

 あの言葉は
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